帰り道。
そっと、射し込んで来た光の眩しさが、まだ、痛いくらいに肌寒く、
私は、公園の中の通りを、ゲートへと向かって歩いていたのです。
時折、すれ違う人々の向こうに、やがて若いカップルの姿。
ふと、二人の間に、ちっちゃな男の子がいることに気付き…


3歳くらい?
お父さん、お母さんと思しき二人の間で3人は手をつなぎながら、
何かを話す様子で、ゆっくりとこちらに向かって歩いてきます。

門の手前、行き交う瞬間に!
にっこりと、頬をほころばせて母を見つめ上げたその笑顔が!
思い返しても切なくなるほどに、
二人への愛情といっぱいの信頼で溢れかえっていました…


昨日は、
41回目を迎えることができた小熊(おぐま)秀雄賞の贈呈式があり、
受賞されたお二人の詩人の肉声に耳を傾け、
記念講演のために来旭してくださったアーサー・ビナード氏の
話に頷きながら、つくづく、自分の無知を感じ取ったものです。

地元紙で、一度、財政難でなくなりかけたこの賞の、
選考経過などを取り上げた記事に目が留まっていなければ、
おそらく、知り得なかったであろう出会いでした。

私が役員のときでしたので3年ほど前になりますが、
たまたま、青年会議所の仲間が存続の重要性を訴えたことから、
旭川青年会議所としてのかかわりがあったということも、
あるいは、私にとって、幸いしたのかもしれません。


ビナードさんは、
そんな私と年齢的にはさほど違わない、少しばかり年長のアメリカ人です。
こんなにも小熊を愛し、その小熊を生んだ日本を愛してくれている。

ビナードさんは、
茶碗蒸しが大好物だそうで、
銀杏が入っていないと“つかまされた!”
と思うそうです(笑)

ビナードさんが、日本やその精神をよく理解し、
受け止め、愛してくれているのは明らかで、
その話の折々に、会場からは、感嘆とも、共感とも
とれる不思議な心地よい笑い声が、何度となく、沸き起こっていました。


今さらそんな人などいないのに、
私は受賞作が収蔵された詩集を受付でそっと買ってしまい、
夜中に、あらためてこっそりと
読み耽った、そんな日が昨日のこと。


必死になって走り続けて、
豊かになったとき、ひと休みしようと思ったときに、
心の隙間を満たしてくれる言葉が失せ、
潤いを与えてくれる笑顔が乾ききっていたら…

そうなってはじめて、気付いたんじゃ
それこそ無知を嘆く甲斐もないわけで。


時間と愛情をかけてゆっくりと育てていかねばならんことを
見落とさぬよう、
ラッシュアワーのざわめきのなかに、ほほを撫でていく風を
感じていよう、
今さらながらにそう思っています。


(がぁがぁと鳴いて歩くがちょうの後を、遅れまいとついて歩く2羽のあひる)